2014年6月30日月曜日

スペース・コロニーは必要か? 2081: A Hopeful View of the Human Future.

今は中古でしか手に入らないジェラード・K・オニールの「スペース・コロニー2081」は学生時代の愛読書。オニールの描くオプティミスティックな未来像がもう大好きで、何度も読み返した。
2081: A Hopeful View of the Human Future.
彼の提案する宇宙植民島が活発に議論されていた70年代当時から「オニールがなぜ急ぐのかわからない。宇宙に植民地を作る前に、地球上には未開拓な地域が広大に残っているのに」と科学者からも批判を受けていたが、オニールが白血病で死んだ1992年から20年経った今では、ガンダムやMass Effectといったフィクションを除いて勢いを失ってしまった感がある。
NASAは火星有人飛行のための実験を継続しているし、SpaceXも火星への移民に乗り出しているが、火星までの距離は6000万km。月までの距離の160倍だ。そんな遠くで住むよりも、地球と月とのラグランジュポイントに宇宙島を作るほうが、よっぽど現実的に思える。
宇宙島なら遠心力によって地球と同じ1Gを生み出せるし、太陽光から100%に近い効率で無限のエネルギーを取り出すことができる。ジェイムズ・P・ホーガンが「未来の二つの顔」で描いたような、宇宙空間で作業用できるドローン(小型ロボット)が進歩すれば、宇宙での建造コストはどんどん下がっていくだろう。
生きているうちに、この素晴らしい風景を眺めてみたいものだ。

2014年6月29日日曜日

Android TV は Google 3度目(?)の正直になるか?

Googleが2014年のGoogle I/O で発表したAndroid TVは、今秋ASUSやRazerから登場予定。
前作(?)のGoogleTVは米4大ネットワークのうちの3つ(NBC、ABC、CBS)から接続を切られてしまった影響もあり、派手な告知と店頭展開をしたにもかかわらず、先鋒を担ったロジクールが100億円も赤字を計上したことは記憶に新しい。したがって今回はいったい何が違うのか?が気になるところだが、現時点で得られている情報では、違いはさほど多くない。

[ゲームコントローラに標準対応。オンラインマルチプレイも可能]

実は前作のGoogleTVでもGooglePlayには接続できたしゲームアプリも実行できたのだが、「いちおうゲームも遊べるよ」程度の扱いだった。いっぽう今回はむしろ「前作の失敗を挽回し、他社にも勝つにはゲームしかない」とゲームに比重をおいたようだ。これはnVidiaのTegraなどAndroid用GPUの性能が上がり、40インチ以上の大画面に出力しても粗が見えにくくなったという背景もあるだろう。
課題は、いかに対応ゲームを増やすかだ。大画面を活かしたゲームを開発するには往々にして億円単位の開発費がかかる。前作の悪い印象もあり、いったいAndroidTVが何台普及するのかもわからず、さらにゲームコントローラを買い足さないと満足に遊べないという条件下では、なかなか積極的にアプリを投入してくるパブリッシャは少ないだろう。
だが、コンソールゲーム機に比べ本体価格が4分の1程度になるとしたら、勝機はある。Googleは、EAのスポーツタイトルなどAndroidTVの普及に貢献しそうなIPをもつパブリッシャに対して開発支援金を出すべきだ(もう始めているかもしれないが)。とくに多人数でわいわいと遊ぶようなゲームでは、さほど高度なグラフィック表示は必要なく、むしろシンプルで手軽に始められるものが求められる。コンテンツさえ揃えば、PS4やXBOX oneを脅かす存在になる可能性は十分にあるだろう。

[Android Wear のスマートウォッチがリモコンになる]

細かいことではあるが、スマートウォッチを購入したら、この機能は試してみたくなるだろう。座布団や雑誌の下に入り込んで行方をくらませたリモコンを探すという長年の重苦から、ついに開放されるのだから。

2014年6月27日金曜日

スマートホームはグーグルをアテにはできない Smart Home by Google/Nest

スマートホーム(ホームコンピュータ)のハブをサーモスタットにしようという発想は、80%以上の家庭にセントラルヒーティングが普及しているアメリカだからこそ生まれたものだろう。
日本では部屋ごとに独立したエアコンをつけているので、同じことをやろうとしたらすべてを対応モデルに買い換える必要がある。エアコンは平均7年は使い続けるので、普及には10年以上かかってしまうだろう。
しかし同じ屋根の下に暮らしていても人によって心地よい温度や湿度は異なる。究極的に目指すべきなのはむしろ、部屋ごとに独立した環境コントロールだろう。日本とアメリカでは気候も生活習慣も異なる。GoogleやAppleはアメリカ人にとって素晴らしいスマートホームシステムを作ってくれるかもしれないが、それは日本人にとっては利便性の低いものだろう。彼らの成果を待つよりも、日本ならではの都合に基づく利便性を追求したシステムを独自で作るほうがよい。またガラパゴスかと非難されるかもしれないが、ウォシュレットのように、いずれは世界を驚嘆させる技術に進化できるかもしれない。
スマートホームの普及における最大の課題は、様々なメーカーの家電が家庭内に入り交じっている中で、いかにプロトコルを統一するかだ。官民協力で統一規格を作るという手段もあるが、調整に時間がかかるし汎用性を重視した結果、規格が完成したころには時代遅れになってしまうことが多い。
したがってどこかのメーカーが「各部屋に端末を設置することで省エネできるシステム」を開発し、爆発的にヒットさせることで、その通信プロトコルをデファクトスタンダード(事実上の標準規格)とするしかないだろう。
システムのイメージはこうだ。
各端末には温度センサーとユーザーの音声コマンドを拾うためのマイクロフォン。エアコンをコントロールするための赤外線送信機と、親機と通信するためのBlueTooth Low Energy、そして室内に人がいるかどうかを判断する動体センサーを搭載させる。配線がたやすいように乾電池駆動にして壁に両面テープで貼り付けられるほど軽量化し、価格も1つ2000円以内に抑える。子供がいる家庭向けの広角カメラを搭載した上級バージョンがあってもいいかもしれない。
親機はWiFiでクラウドに接続し、時間・天気予報といった一般情報のほか、ユーザーのスマートフォンからの指示を受け付ける。家の間取りと端末の位置をもとに、もっとも効率的にエアコンを作動させる。
端末の数にもよるが、価格はどんなに頑張っても2万円以上になる。このシステムを普及させるには「快適な生活が送れる」ことを詠うだけでは不十分で、数年内に損益分岐点に達することを明確に示さなければならない。オープンソース化を条件にするなどして、できれば国の補助金が欲しいところだ。
いったん普及してしまえば、このプロトコルに対応した電灯、扇風機、ヒーター、冷蔵庫などが登場し、省エネ効果はさらに増大する。「おもてなし」の精神で作られた,細かいところまで気のきいたこのシステムは、いずれ世界にも認められるのではないだろうか。

2014年6月25日水曜日

壁紙型ディスプレイ時代の操作方法を考える

数年後から10年後にかけて、家やオフィスの壁や窓が大型ディスプレイに変わっていくことは間違いない。部屋の壁をすべてディスプレイにしたら、海底を散歩する気分を味わったり、友達とバーチャルリアリティなゲームを楽しんだりできるし、世界中のテレビ番組を同時に見るなんてこともできるだろう。

だが、操作はどうするか?
ファンタジー世界を観光中に、無くしたリモコンを手探りで探すなんて無粋なことはしたくない。やはりKinect や Leap Motion のようなジェスチャー入力が有力だろう。マイノリティ・レポートでトム・クルーズは特殊な手袋をはめて操作していたが、深度センサを複数設置すれば、素手での操作はさほど難しくないと思われる。
ポインティングについては人差し指を突き出して指示する方法がもっとも直感的だが、問題は決定(クリック)の操作をどうするかだ。指を突き出す動きを決定とするという案があるが、ドラッグの認識が難しい。親指を立てて決定という案も聞いたことがあるが、ポインティングしながら操作できないと意味が無い。個人的には、人差し指でポインティングしつつ、親指を立てることで決定にするのが良いのではと考えている。


ウェアラブルの勝者は腕時計型か?眼鏡型か?

スマートウォッチ

Pros
・入浴中や就寝中も装着し続けることができる。
Cons
・画面が小さい。
・ヘッドホンを併用しないかぎり、通話しながら画面が見えない。

スマートグラス

Pros
・歩きながらでも通話しながらでも画面が見られる。
・両手がフリー。
Cons
・頭の上に重くて固いものが乗っているのは邪魔。はずしたくなる。

・・・と、いずれも一長一短で甲乙つかがたいが、個人的にはどちらも勝者となることはできず、しれっと登場したスマートペンダントが漁父の利を得るのではないかと予想している。

スマートペンダント
Pros
・入浴中でもつけ続けることができる。
・ネームタグのような形状にすれば、大きな画面も実現できる。
・両手フリーで通話できる。
Cons
・就寝時ははずしたくなる。

2014年6月24日火曜日

スマートフォンの時代は終わったか?

「スマートフォンの時代は終わる」とは2013年1月、久夛良木 健氏による発言だ。

スマートフォン全盛でまだまだ伸びている時期に、このようなことが言えてしまう久夛良木氏はやはり凄い人物だと思う。流行に乗っていると熱に浮かされていて気づかないものだが、冷静に考えれば盛者必衰は当然の理。スマートフォンの時代は遅からず終わる。
今世紀の中頃には脳神経にナノチップを直結するなどして完全なユビキタスが実現し、人間は何も持ち運ぶことなく、いつでもネットワークにアクセスすることができるようになるだろう。そんな時代の人間からすれば、ずしりと重いスマートフォンを手にもって音声通話したり、小さな液晶画面を背中を丸めて覗き込んでいる今の我々の生活は、滑稽で原始的に映るはずだ。丁度、現代の子供たちが黒電話やMS DOSのコマンドプロンプトを見ても訳が分からないように。
半世紀後はともかくとして、直近ではどうだろうか?
スマートフォンの便利さに酔わされていると、こんな便利なものがスタれるはずがないと勘違いしてしまいがちだが、スマートフォンはとにかく重いし画面が小さすぎる。手にもって音声通話していると腕が疲れるし、画面解像度があがるほどに文字が読みづらくなっている。「折り畳める液晶ディスプレイ」は順次開発が進んでいるので、来年あたりからリリースが始まり、やがては「かまぼこ板型スマートフォン」(将来そう呼ばれる)は廃れ、薄くて軽い「シート型」が主流になっていくだろう。
さらに低価格化が進むと、現在デスクトップ・パソコンをマルチモニタで使う事が珍しくないように、用途に応じて2枚、3枚の「スマートシート」を持ち歩くようになる。机の上に無造作に広げた何枚かのシートや、壁にべたべたと貼付けたシートを見比べながら、書類を作成したり、作品を作ったりすることになるだろう。
今じゃ「もったいない」と感じるかもしれないが、いずれ人々はちょっと汚れただけでスマートシートをゴミ箱に放り込み、駅のキオスクで使い捨てのシートを買うようになるのだ。





2014年6月23日月曜日

iWatchに搭載される驚きのセンサーとは?

2014年6月20日のウォールストリートジャーナルによると、iWatchは健康やフィットネスをモニターするための10種類以上のセンサーを搭載する(The devices will include more than 10 sensors to track and monitor health and fitness data)とのことだが、10種のセンサーとはどんなものだろうか?

アップルが満を持して発表するウェアラブルデバイスだけに、少なくともひとつは、我々をあっといわせるセンサーを搭載してくるに違いない。そこで、そのセンサーが何なのかを予測してみることにする。

■恐らく搭載されるが健康ともフィットネスとも関係ないのでカウントされないセンサー
照度センサー
タッチセンサー
マイク
近接センサー 
Touch ID用の指紋センサー

■おそらくiWatchに搭載されるセンサー
①歩数計
②心拍センサー
③位置センサー 
④加速度センサー 
⑤ジャイロセンサー 
⑥地磁気センサー 

■多分無理なセンサー
脳波センサー
体重計
血糖値センサー
コレステロール値センサー
肺活動量計

■iWatchに搭載されるかもしれないセンサー
⑦体温センサー
⑧気圧センサー (Galaxy S5)
⑨体脂肪センサー
⑩血中酸素濃度
⑪血圧計

個人的にはGPS(位置センサー)を搭載してくれるだけでもかなり嬉しい。
Nike Running でランニングをトラッキングするため、今はiPhoneを腕にバンドで巻きつけて走っているのだが、腕が重いし少しずつ下にズレてきてしまうからだ。

2014年6月22日日曜日

このままでは Google Glass は使えない

アメリカの映画館チェーン「Alamo Drafthouseは館内でのGoogle Glassの着用を禁止にしたそうだ。
シアトルのレストランがGoogle Glassを禁止した際には物議をかもしたが、映画鑑賞中に情報端末は使わないだろうし、著作権保護の観点からも、これは妥当な判断だろう。他の大手映画館チェーンも追従するのではないだろうか。
しかしこんな調子でスターバックスや駅や公園など、Google Glassを使いたい場所でさえプライバシー保護を目的として禁止されてしまうようになると、せっかくのウェアラブルも使い途がなくなってしまう。

いっぽう映画館側もGoogle Glassを禁止したからといって安心はできない。スマートデバイスはどんどん小型化しており、いずれは外見上、通常のメガネとまったく区別がつかないものもでてくるだろう。さらにはコンタクトレンズサイズにまでなってしまったら、目視で取り締まるのは事実上不可能になる。

Googleとしても盗撮目的でGoogle Glassを使われるのは不本意だろうし、「禁止されないための機能」を追加しておくべきだろう。
たとえばパリミキの雰囲気メガネ『Fun'iki』のように、録画中はLEDが派手に明滅するようにしてはどうだろうか?


日本のエネルギー問題を解決する方法はこれ MIS (Mosquito Intercept System)

日本の電力消費量はエアコンの使用量が増える夏場にピークに達するが、電気は現状貯めておくことができないため、このピーク時期の電力消費量に合わせて発電所を作らなければならない。つまりエアコンを使わなければ原発に頼る必要も無いのだ。
ではなぜ日本人は夏にエアコンを使うのか?
もちろん暑いからだが、扇風機でもかなり涼感は得られるはずだ。
窓を閉め切ってエアコンをつける理由・・・それは窓を開けていると「蚊」が入ってくるからだ。
蚊を侮ってはいけない。蚊は人類史上もっとも多くの人を殺めてきた生き物なのだ。
要するに蚊さえいなくなれば、日本のエネルギー問題は解決するのだ。
英ロンドン大学インペリアルカレッジ(Imperial College London)などの生物学者チームが発表した論文によると、蚊の遺伝子を組み替え、95%の確率で雄が生まれるようにすることで、わずか6世代後に蚊を絶滅させることができるという。
もちろん遺伝子操作によって生態系を操作することはより大きな問題を引き起こす危険がある。
したがって日本の技術を結集し、部屋に侵入して来た蚊を100%の精度で撃ち落とす、ナノテクノロジー迎撃システムを開発すべきだ。税金はこうゆうことに使っていただきたい。

2014年6月21日土曜日

Amazon Fire Phone のウリ「Dynamic Perspective」は、実はアナログジョイスティックだった!?

一昨日(2014年6月18日)にAmazonが発表したスマートフォン「Fire Phone」の特徴は、目の前の商品をスキャンして即Amazonで注文できるサービス「FireFly」と、4つの広角(120度)フロントカメラとOmronの顔認識技術「Okao Vision」を組み合わせ疑似立体表現を可能にした「Dynamic Perspective」の2つ。
Amazon Fire Phone
Amazon Fire Phone
個人的には「既に目の前にある物」より「発売前の物」のほうに購買意欲をそそられるので(笑)「FireFly」はさほど魅力的ではなく、気になるのは「Dynamic Perspective」のほうだ。
日本では一時期、裸眼立体視に対応した携帯電話やスマートフォンが発売されたものの、いずれも不発に終わっており、立体表示じたいに懐疑的な人も多いのではないだろうか。
実際、Fire Phoneにおいても顔認識技術自体は既に多くのコンデジに搭載されているので珍しくはないし、ユーザーの顔の位置に応じて立体モデルの視点を変える効果も、遥かな昔(2008年)にカーネギー・メロン大学のJohnny Lee(現GoogleのRapid Evaluator)がWiiリモコンを頭につけた実験で実証済みなので想像の範囲内だ。スマートフォンを傾けることで立体モデルを別の角度から見る事ができるアプリも「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」などで採用されているLive-2D技術によって見慣れている。
したがってDynamic Perspectiveでできることは、今まで「スマホを傾ける」ことでやっていたこととほとんど変わらないということになるのだが、だからといって価値が無いとも思わない。加速度センサーは重力に垂直な方向の回転にしか反応しないし、姿勢を崩して使うとき正確に反応しなくなるからだ。いっぽうDynamic Perspectiveが見ているのは画面に対する眼の位置だけなので、暗い場所では不利という問題はあるものの、あらゆる方位角の変化を検知できるし寝ながらでも同様に動作する。
スマートフォンのFPSやTPSでは、よく画面の左下にバーチャルパッドと呼ばれる領域を設定し、この上の親指の位置で移動操作をさせているのだが、これが非常に使いにくい。センター位置が触覚的に分からないため、プレイしていると親指の位置がずれてしまい、思わぬ方向に移動してしまったりするからだ。Fire PhoneのDynamic Perspectiveは、ゲームにおける直感的な移動操作を可能にし、ゲーマーのストレスを解放してくれるのかもしれない。




2014年6月20日金曜日

川島隆太教授 「Google Glassなんて3日で飽きる」

川島隆太教授は自ら開発に協力しているウェアラブルデバイス「JINS MEME」の発表会にて記者たちに対し、「皆さんGoogle Glassをかけますか? あれは本当に好きな人しか掛けないですよ。あれをみんながかける世界が来ると信じていたらあの会社(Google)は潰れる、くらい思っていいます。」と発言したそうだ。
頭につけるデバイスは、よほど軽くて細くて安定感が無い限り、日常的に着け続ける気にならないという論旨には全面同意だ。しかしMEMEは眼鏡型のセンサーであり、映像を見たりシェアしたりするGoogle Glassとはコンセプトも用途も異なるのだから、果たして公の場で実名を出して批判する必要があったのだろうか。

他社製品と比較するなら、むしろ同じくウェアラブルなセンサーであるNikeのFuel Bandを引き合いに出すべきだろう。Fuel Bandはスリムで軽くて、ずっと着け続けていても不快ではなかった。万歩計のような歩数ではなく、「Fuel」という新たな単位を導入して日常の運動量を計測するというアイデアも秀逸で、毎日のFuelをスマートフォンで確認するのが楽しかった。自転車を漕いでもちゃんとFuelがカウントされるセンサーの精度も素晴らしい。(万歩計は自転車をカウントできない)今Fuel Bandを装着していないのは、残念ながら防水機能が無かったため、ランニング中の汗がしみこんで壊れてしまったからだ。

いっぽうMEMEは角膜と網膜の電位差を計測することで、人間が自覚していない眠気や疲労を警告してれるとのことだが、個人的には必要性を感じなかった。わざわざハイテク機器で計測しなくても、日ごろから眠さや疲れは自覚しまくっているからだ。
むしろ眠気を打破してくれたり、疲労を回復してくれるデバイスなら、ぜひ購入したい。

Telepathy One の実現は絶望的か?

2013年8月に5億円を調達しGoogle Glassの対抗馬と騒がれたウェアブル端末「Telepathy One」だが、5月末日をもって井口氏がCEOを退任したそうだ。
いったい何があったのかについては今後情報がでてくるだろうが、井口氏が日ごろから「スタートアップにはハッタリも必要」と語っていることや、「2014年に発売を目指す」割には、試作品がコンセプトモデルに近いことから推測すると、恐らく理想を追求しようとする井口氏と、その構想の実現に年月がかかることを実感している現場、あるいは早期回収を強く求める投資家との間で対立が生まれたのだろう。
確かにマイクロソフトのビルゲイツも創業当時、まったく何も無い状態で投資家に対してMS-DOSの素晴らしさを語り、まんまと資金を調達してから作り始めたというのは有名な話だ。しかしだからといって「ハッタリも必要」などと公言してしまっては、現場の開発者も投資家も不安になるのではないだろうか?

井口氏は「2014年の発売を目指したい」と発言していたが、未来的にデザインされたフレームは、転倒時にいかにも目に突き刺さりそうで、量産品としての安全基準を満たせるかどうか疑問だ。
また、大きな技術革新でもない限り、あの細いフレームに収まるサイズの電池では、十分な駆動時間が得られないだろうし、GoogleGlassとの差別化ポイントとして挙げられているジェスチャー入力も、様々な光が入り乱れる生活空間で、指の動きを正確に捉えることは現実的に難しく、深度センサーの小型化とソフトウェアの開発に時間がかかりそうだ。

井口氏が去ってもエンジニアが残ってTelepathy Oneを完成させようとするかもしれないが、恐らく実現性を考慮して無難な眼鏡型のデザインに変えたとしても、発売まで1年以上はかかるだろう。その間、Google Glassも小型化を追求してくるかもしれないし、他社もウェアラブルデバイスに注目している中で、Telepathy Oneが優位性を保てるかというと疑問だ。

2014年6月18日水曜日

2年後の自転車はこうなる!

サムソンがスマートバイクのコンセプトを発表した。
Samsung's Smart Bike Concept
・スマートフォンを磁力でハンドルに装着(スマートフォン本体にもアダプタをつけないと無理では?)
・周囲の明るさに応じてライトが店頭(日本のママチャリでは既に標準装備)
・バックカメラ(これは欲しいが技術的には簡単)
・路面にレーザー照射(今日の会社帰り、大森駅近辺で既に搭載している自転車を見た)
・GPSでトラッキング(既に実現済み)

・・・と、デコチャリブームを知る世代としてはインパクトの弱い残念なコンセプトであった。

正直、どうせ発表するなら、2年後にリリースするとして、以下の機能ぐらいは搭載して欲しかった。

・ブレーキ連動発電機でスマートフォンをチャージ。
・GoProを同期させ、ドライブレコーダーとして使える。
・GPSを内蔵しているため盗まれても見つけられる。
・触れると警告が鳴り、それでも触れているとサイレンが鳴る。
・耳の位置に音を集音するスピーカーで、ヘッドホンを使わずに音楽が聴ける。
・スピードダウンすると自動的にシフトダウンする。
・ウィンカー。昔のデコチャリみたい。
・スマートフォンに表示されたマップを操作(拡大縮小・スクロール)できるジョイスティックをハンドルに装備。
・夜間走行時、路面の急激な変化を察知し警告を与えてくれる。
・タイヤ空気圧の低下を警告してくれる。

こうして見ると、路面センサー以外は、どれも現存技術で実現できそうだ。防犯機能によって盗まれる心配が無くなるなら、価格が高くなっても購入されるのではないだろうか。

2014年6月17日火曜日

2018 FIFA ワールドカップ ロシア大会を予想してみる FIFA World Cup in Russia

2014 FIFAワールドカップで日本代表は初戦のコートジボアール戦で敗退してしまったが、へこたれず前向きに未来のことを考えてみたい。
今回のブラジル大会では、ボールがゴールラインを通過したかどうかをビデオカメラの映像で解析し、結果を審判の腕時計型端末に表示するシステムが導入されたが、
Goal-Line Technology (GLT)
次回、2018年のロシア大会では、どのようなハイテクが導入されるのだろうか?
4年後に覇権をとっているのがOculusなのかMorpheusなのかGlyphなのかわからないが、3Dヘッドマウントディスプレイによって、まるでロシアのスタジアムに来ているかのようなリアル感で観戦できるような環境は、今より簡単に手に入るだろう。
Oculus Rift
全方位撮影できるカメラを客席に配置し、両となりにサッカー解説者と女優さんでも座らせておけば、へたをすると実際にロシアに行くより安く楽しく安全に観戦できそうだ。


また、自宅の部屋の壁いっぱいに表示できるようなプロジェクターが安価に販売されるようになり、ちょっとお金に余裕があるサッカーファンは複数台のプロジェクターを購入し、天井や左右の壁面にも中継画像を投影し、友達を招いて盛り上がることだろう。

会場には8Kのビデオカメラが配備されあらゆる角度から撮影されることはもちろんだが、さらに試合中、上空を多数のクァッドコプターが飛び回ることになる。視聴者は好きなカメラアングルを選んだり、複数のモニターに異なる映像を表示したりして、観戦を楽しむだろう。
2014年のブラジル大会におけるブラジル対クロアチア戦では、クロアチアのDFロブレンがブラジルのFWフレッジをゴール前で倒したことで西村主審がPKの判定を下し、それが誤審疑惑を呼んで試合の後味を悪くしてしまった。ロシア大会では、多数の「コンピュータの眼」が、シミュレーションを企てようとする選手達を全方位から監視することになるだろう。

2014年6月15日日曜日

2020年の家はこうなる! Panasonic revealed "Wonder Life-BOX 2020"

りんかい線の国際展示場駅を降りてすぐのところにある「パナソニックセンター東京」に、新しい施設「Wonder Life-BOX 2020」ができたので行ってみた。2020年の近未来家屋が体験できるようだ。
玄関

  •  配達情報から自動的に適切な大きさの扉が開き、適切な温度に設定される宅配ボックス。
  • 顔認識して開く玄関の扉。未来は宅配利用率が今よりもずっと上がるのだ。
  • 室内でハーブを栽培し、客に新鮮なハーブティーをサーブできる。
  • 客の趣味に合わせて表示が変わるディスプレイ。壁のレールに引っ掛けるだけで充電されるのでケーブルが不要。

台所

  •  配達されてきたパッケージをテーブルに置くだけで中身が認識され、テーブル上におすすめレシピが表示される。
  • 音声入力でレシピを選ぶと調理アドバイスとともに自動的にオーブンの予熱開始。
  • 水道から出る水の量も音声入力で調整できるので計量カップいらず。

居間

  • プロジェクターで壁面に自然の風景を投影。
  • 音声入力で世界各地の生放送が見られる。 

寝室

  • 鏡の前に立つと、心拍数が読み取られる。鏡がディスプレイになっており、健康状態が表示される。
  • 全身が映るディスプレイの前で服やバッグのコーディネートができる。服の色を変えてみたり、照明の質を変えてみたり。録画することで背後もチェックできる。
  • 夜になったら自動的に照明が点灯。就寝中の体温や寝返り状態が計測される。

というわけで、6年後という設定なので無理もないのだが、金さえはらえば今でも実現できそうなものが多く、リアリティはあるものの、インパクトは弱かった。
せっかくパナソニックなのだから、6年後の調理器具とか掃除用具とか洗濯機とか、もうちょっと未来の白家電も見せて欲しかったというのが本音だ。
・・・とはいえ無料の施設なので、国際展示場に行く際、時間があまったら利用していみるのもよいのではないだろうか。涼しいし。

2014年6月14日土曜日

磁力で浮上するラジコンカー! Takara-Tommy`s Maglev-Powered Toy

タカラトミーがおもちゃショー2014でコンセプト展示した「電磁浮上ビークル」は、アルミのような(非磁性良導体)の上でという制約はあるものの、(風力ではなく)磁力で約1センチも浮上する驚きの玩具だ。
Maglev Powered Toy
電磁浮上ビークル
その構造は(株)アトム技研という会社の特許資料の図が分かりやすい。(タカラトミーがこの会社の特許を使っているかどうかは未確認)
車体の四隅に浮上装置を配置しているのだが、それぞれの浮上装置は、円周上にN極とS極を交互に配置した円盤状の永久磁石と、それを高速回転させるモーターから構成されている。
この円盤磁石を回転させると、周囲の磁場の向きは激しく変化するのだが、その磁界内に、アルミニウムのような「磁石に引き寄せられないが、電気は良く流れる」金属板があると、金属板の中にはその磁場変化を打ち消す方向に電流が流れ(誘導電流、あるいは渦電流と呼ぶ)、結果として磁場変化とは逆方向の地場が発生する。そのため、円盤磁石と金属板が反発しあうわけだ。
さらにこの円盤磁石の向きを変えることで、前後左右好きな方向へと進むことができる。
今回の展示では円盤磁石を地面に水平に配置したタイプと、垂直に配置したタイプの2種類がデモされていたが、前者は直進安定性があるものの、なぜか後退ができず(ただの故障かもしれないが)、後者は浮遊高度は高いが常に揺れている感じでまともに直進できなかった。
ころがり摩擦は自動車のゴムタイアの場合、高速域になると速度の3乗に比例すると言われているが、磁気浮上ではゼロなので、わずかな力が加わっただけでも不本意な方向に動いてしまうわけだ。
とはいえ、この浮上方式の素晴らしい点は、地面側に永久磁石やコイルを配置する必要が無いという点だ。将来、乗用車に適用するには道路を造り直す必要があるが、道路の面積は途方も無くに広く、コストの安さが実現性を決定づけるからだ。

2014年6月13日金曜日

オキュラス・リフトはまだ粗い! Oculus Rift DK1

Oculus Riftは、来月(2014年7月)からDK2と呼ばれる次期バージョンが出荷される予定とのこと。
Oculus Rift
Oclus Riftの視野角の広さとジャイロの追従速度は素晴らしい臨場感を生む。特にジェットコースターのデモでは三半器官が混乱して体が揺れてしまうし、Wii UのPanorama Viewのような風景のデモを見ると、観光業界は危機感を持ったほうがよいのではないかと心配になる。ポリゴン美少女を間近で見ていると、FPSがマイナーな日本では、やっぱりこっち系のニーズがいちばん高いのだろうなと確信を憶える。

いっぽうで、誰もが口をそろえて指摘する問題点は解像度だ。DK1では1280×800pixelの液晶パネルを使っており、左右の眼に映像を振り分けているため、横の解像度が半分の640しかない。それで目前を覆うような110度の視野角を実現しているわけなので、液晶の編み目がはっきりと見えてしまうほど解像度が低い。前述の美少女も、肌の輪郭が汚いので残念な感じだ。SONYのProject Morpheusに明確に負けている点でもある。DK2では解像度が倍になるとのことなので、この点はかなり改善されることだろう。

また、これはOculusに限ったことではないのだが、コントーラーで自由に動けるデモでは、没入感が薄れてしまう。自分の足ではなく指の操作で移動しているため現実感が無いということもあるが、ヒットにぶつかって止まってしまったりなどゲーム的なルールが割り込んでくるため現実に引き戻されてしまうのだ。トレッドミル型コントローラは疲れそうだし、移動に関しては新たな発明に期待したいところだ。

2014年6月12日木曜日

SmileはiWatchよりイイのかも!(見た目の話) EmoPulse's Smart Watch "Smile"

EmoPulseという会社が予約を受け付けているスマートウォッチ「Smile」のデザインは、ご覧の通り、かなりイケている。
Smile
Smile
U字型しているのと、曲面液晶ディスプレイが裏側までぐるりと回っているので、手の甲を回転させることでサイズの割にはかなり大きな範囲を見渡すことができる。
オフィシャルサイトでプロモムービーを見ることができるが、NFCに対応しているので手ぶらで買い物にでかけることもできそうだ。
実際には、このデバイスに対応するアプリは少なく使い勝手が悪いだろうし、ランニング中に遠心力でハズれてしまったりなど、実用面では問題があるかもしれない。しかしこのデザインは実用性も高そうで、将来スマートウォッチのスタンダードになるかもしれない。

2014年6月10日火曜日

ニューログリッドは電気ネズミの夢を見るか? Neurogrid

スタンフォード大学のKwabena Boahen博士らのチームが開発したNeurogrid
Neuro Grid
Neurogrid
わずか400万円で作られたにも関わらず、約105万本のニューロンと数十億個のシナプスの動作を再現でき、その分野における能力は従来のコンピュータの9000倍とのこと。

なぜこのような大躍進が可能になったのかというと、従来はたったひとつの間違いも許さず大まじめに厳密な計算をやっていたところに、「ちょっとぐらい間違ってたって、だいたい合ってりゃいいじゃん」という人間らしい割り切りを導入したからなのだ。
実際、人間の脳は驚くほど不正確らしい。シナプスは30%~90%の確率で間違うが、それでも脳は問題無く動作している。結果オーライ。完璧じゃなくてもよいのだ。むしろその不正確さ(neural noise)こそ、人間のアイデアやクリエイティビティの源泉ではないかとさえ言われている。つい先日も、IBMのジャネット・ガルシア博士が、うっかり実験で混ぜる材料をひとつ忘れてしまったために、新種の熱硬化性ポリマーを発見したことが話題になった。将来ロボットも、たまに間違いを冒すことで、人間のようなアイデアを生み出すことになるかもしれない。

とはいえBoahen博士(当時助教授)の2009年のインタビュー記事を読んでみたところ、「2011年までにニューロン6500万個(マウス並)を実現したい」と語っており、決して順調というわけではなさそうだ。ぜひとも2045年までに人類の脳(神経細胞1000億)を目指して欲しい。

2014年6月9日月曜日

チューリングテスト攻略法が発見される! Eugene Goostman

2014年6月7日(土)、人工無能Eugene Goostmanくんがチューリング・テストに合格した。
Eugene Goostman
テスト条件は案外ゆるくて、音声ではなく文字によるチャットでテスト時間は5分、30%以上のテスターが「人間かどうか区別がつかない」と答えれば合格とのことなので、これですぐHALみたいな人間なみの人工知能が生まれるということではない。しかしディープ・ブルーがチェスのグランドマスターを破り、ワトソンがジョパディーでチャンピオンを破った件と同様に、今回の偉業が人工知能史に残るランドマークになることは間違いないだろう。

恐らくEugene Goostmanのアルゴリズムが公開され、あるいは解析されることで、そのチューリングテスト攻略法は瞬く間に全世界の研究者によって検証され、改良を加えられ、時を経ずして当たり前の技術になる。もしチューリング・テストが合格条件を変えなかったら、今後は合格者続出になってしまうはずだ。
しかしアラン・チューリングは1946年、以下のように語っている。

「今から30年以内に、コンピュータに質問をすることは、人にするのと同じくらい簡単になるだろう」

つまりチューリングテストを提案したアランにしてみれば、1976年より以前に合格者がでることを想定していたわけで、我々は40年ちかくも遅れをとってしまっているということなのだ。

ある意味、ようやく人工知能を厳密な基準で評価できる時代に突入したということなのかもしれない。いずれにしてもめでたいできごとだ。おめでとう、Eugene!

2014年6月8日日曜日

ソフトバンクが食いだおれ人形を発表! Softbank Pepper

Softbankの感情認識ロボット「Pepper」は2015年2月、19万8000円で販売予定。
Softbank Pepper
Pepper
食いだおれ人形のように店頭での客寄せに使う店舗経営者とか、初音ミクに改造してYouTubeで自慢するといったいちぶのオタクは購入するかもしれないが、ニーズは極めて限定的だろう。Softbankのホームページを見ると、家族といっしょにPepperが楽しげに暮らしている写真が載っているが、家族がいたらコミュニケーションロボットなんて不要だ。ただでさえ騒がしいのに騒音を増やしてどうするのか。むしろほしいのは静寂だろう。本当に感情を理解してくれるならカウンセラーとか仲裁役として活躍できるかもしれないが、現在のコンピュータ技術で、感情を理解するなんて人間にも難しいことがロボットにできるはずもなく、感情が不安定な時にロボットから見当違いのことを言われたら迷惑以外の何ものでもない。
コミュニケーションロボットを必要としているのは、恋人がいないオタクか、ひとり暮らしの老人だ。メーカーとしては認めたくないかもしれないが、それが現実だ。家庭用ロボットで利益を出したいのであれば、ローゼンメイデンのような美少女型ロボットが、プリモプエルのように柔らかくて技術的知識が無くても扱えるものにすべきだ。
もっともこれらもニーズも限定的だ。本格的に一般家庭にロボットを普及させるには、会話だけでなく、部屋のかたづけや掃除ができることが第1条件だろう。ルンバにマニュピレータを搭載し、かたづけ可能にしていくほうが近道なのかもしれない。
Intel Jimmy
Intel's Jimmy
intelのjimmyは2014年末発売予定だが、こちらはオープンソースでボディが3Dプリンタで自作できることもあり、家庭用ロボットというより、いじって遊ぶホビーとしての位置づけになるだろう。

個人的にはロボットは大好きで、早く一般家庭に入って欲しいと願っているのだが、どうもPepperの発表会は鼻についた。「感情が理解できる」などとできもしないことを大ぼら吹いているように感じるからかもしれない。そう感じたのは決して少数ではないようだ。
ソフトバンクの株価は「重大発表前」の6月5日の朝に向けて上昇し、13時の発表後減少。皮肉なことに、ロボット関連としてサイバーダインと菊池製作所の株価がつられて爆騰した。

人工知能は計算機ではない 「認識機」だ Recognizer, Speculator and Artificial Life

未来技術に関するブログを書いていると、Computerという言葉に対する違和感が日に日に増していく。Siriの延長線上にあるようなエクスパートシステムであっても、フォン・ノイマン型、つまりメモリからプログラムを読み込んで実行していくタイプであれば、Computer(計算機)と呼び続けてもよいだろう。だが、我々が未来のコンピューターに求めている機能は計算だけではない。人間のように、あるいは人間以上に思考し、人間の幸福追求をサポートして欲しいのだ。とはいえ、それらの優れた未来の機械を人工知能(Artificial Intelligence)と大ざっぱにひとくくりにしてしまうのも乱暴だ。SF映画では良く、雷に打たれたロボットが突然意識を持ったりするのだが、実際には理想の形態に達するまでに、少なくとも3つの技術的パラダイムシフトをたどることになるだろう。

最初のステップは既に進行中で、「Recognizer(認識機)」とでも呼ぶべきか。従来のコンピュータが事前に与えられた膨大な知識を基に判断するトップダウン方式であったのに対し、これは幼児の状態で生み出され、自ら学習を進めていくボトムアップ方式とも呼ばれる。iRobot社のロボット掃除機ルンバ(Roomba)が、壁に激しく衝突しながら部屋の構造や障害物を学習していくのはボトムアップ方式であるがゆえだ。ただ、ルンバは掃除しかできず汎用性がない。Recognizerたりうるためには、認識対象として物体の形状だけでなく、素材・堅さ・重さ・動きやすさ・脆さといった特徴や、空間・時間・言葉・生命といった目に見えない概念も認識できなければならないし、他の概念との関連性によって対象の「意味」を認識しなければならない。
実際、人間の脳の主な役割はパタン認識なのだ。1000億の脳細胞が常に新たな情報や経験をもとに脳神経のつながりを再構成し続けている。おそらく従来のコンピュータでは実現できず、ニューログリッド(Neurogrid)のような新たな構造が必要だろう。

しかし学習するだけでは、単に「買ってすぐつかえないコンピュータ」に過ぎない。未来の危険を回避したり、より効率化を進めるため、仮説を立て、検証できる能力が必要だ。それが2番目のステップでり、推論機(Speculator)とでも呼ぶべきものだ。最初は「人類をあらゆる自然災害から守れ」とか「より高い温度で超伝導状態になる材料を探せ」といった具体的な指示に基づいて試行錯誤することしかできないが、次第に曖昧で大ざっぱな指示(今で言う、あいまい検索)にも反応できるようになるだろう。そのためにはいっけん関係の無い概念どうしを関係づけて結果をシミュレートする必要があるが、関係のある関係よりも、関係の無い関係のほうが遙かに数が多いわけで、それらの組み合わせの数となると、天文学的という表現では足りないほどの数に達する。したがって現実的に、自己増殖(self-propagation)機能を併せ持ち、並行処理能力を指数関数的に増大させていく必要にかられるだろう。

ここまでくれば、人間が一般的に機械に求めている能力は備わったと言えるし、カーツワイルらが予言する技術的特異点にも達するかもしれない。人間の指示に従っているだけなので機械に過ぎないのだが、機能としてはすでに思考力を持っており、性能は人間の脳を凌駕している。これを機械から生命(Artificial Life)に変えるには、単に最優先命令(Prime Directive)を変えるだけでよい。「自分の幸福を追求しろ」と。

2014年6月7日土曜日

コンピュータの知能が人間の脳に到達する日 The day artificial intelligence overcomes human brain


レイ・カーツワイルは、「2019年までに1000ドルのパソコンが人間の脳と同じ実力をもつに至り、2045年までに全人類の10億倍の知能に達する」と予想しているが、ニューヨーク市立大学の理論物理学教授であり、超ひも理論の権威であるミチオ・カク博士は人工知能の分野における現在の状況を下記のように捉えている。

「ゴキブリさえ、物体を認識して迂回することを学習できる。われわれはまだ、母なる自然のきわめて下等な創造物に、最高の知能をもつロボットでも勝てない段階にいるのである」
「ロボットがマウスやウサギ、イヌ、さらにはサルぐらいに賢くなるには、まだ何十年も熱心に研究しなければなるまい」
Michio Kaku
Michio Kaku

以下の6つの理由により、彼はコンピュータの知能が人間に達する段階を今世紀の末と見ている。
①ムーアの原則は減速し、2020~2025年頃に止まるかもしれない。
②コンピュータの計算速度が脳のそれに達したとしても、賢いというわけではない。
③コンピュータが自分より賢いコピーを作れるかどうかわからない。
④ソフトウェアの作成は人間がコーディングしなければならないため時間がかかる。
⑤脳の分析には金がかかる。資金が集まらなければ時間がかかる。
⑥意識には段階があるため、機械がいきなり意識をもつようになることはない。

脳細胞の数はショウジョウバエで15万、マウスで200万、ラットで5500万あるが、人類の技術はまだショウジョウバエの脳さえもシミュレートできていない。しかし人間脳は1000億の脳細胞をもち、おのおのが1万の脳細胞と結合している。カク博士の推測はやや悲観的すぎるきらいもあるが、人工脳の実現には、かなりの困難を要することは間違いないだろう。

iBeaconのついでにX-MEN: フューチャー&パスト iBeacon at TOHO Cinemas Roppongi

iBeaconを体験するため、TOHOシネマズ六本木に行ってきた。(実は溜池山王駅から目視で六本木ヒルズに歩こうと試みたところ、間違ってオープン前の虎ノ門ヒルズに行ってしまった。デザイン似すぎでややこしい)
さて本来であれば、アプリをインストールした状態で館内に入れば、アプリを起動していなくてもPUSH通知が表示されるはずだったのだが、残念ながら無反応だった。iPhone4Sには最新のOSがインストールされており、Bluetoothもアプリのバックグラウンド更新も、位置情報もすべてON。設定上はまったく問題無いはずだったのだが、原因は今でも不明。
不本意ながら手動でアプリを立ち上げたところ、いちおう上の写真のように動画再生が可能になり、X-MENフィーチャー&パストの予告編を最後まで見終えるとQRコードが表示された。券売機でチケット購入時、お金を入れる前にこのQRコードを読み取り機にかざしたところ、300円の割引となった。今回は注意深く操作したが、流れで軽快に操作していたら、正規料金を払っていただろう。
iBeaconの価値はアプリを起動していなくてもPUSHされることにあるのであって、そこが機能しないようでは話にならない。ユーザーが予告編を見終わった状態で券売機に近づいた場合は自動的にQRコードを表示し、利用を促すぐらいののことはしてほしかった。今後このようなサービスが増えてきたら、きっと半端な使い方をしているものは淘汰されていくのだろう。

2014年6月3日火曜日

東京国立博物館の静かすぎる挑戦 「トーハクなび」

「トーハクなび」とは、東京国立博物館の館内案内アプリのこと。「トーハク」は東京国立博物館の略なのだ。App Store, Google Play にてダウンロードできる。
上野動物園で台数限定でレンタルしているユビキタス・コミュニケータは、ICタグ方式、スマートフォ用アプリ「上野動物園ナビ」はGPSを使って位置情報を取得していたが、「トーハクなび」はAndroid版はPlaceEngine、iOSは最先端のBLE (Bluetoodh Low Energy)を使っている。今回はiOS版を試したのだが、展示室を歩いて移動すると、自動的に展示内容に合ったムービーが再生される。測位精度は高く、迅速だった。説明板を読む必要が無く、音声で説明を聞きながら展示物をじっくり鑑賞することができるので、大変理解しやすい。PlaceEngine用の無線LANデバイスは展示室の扉にでかでかと貼付けてあったが、BLEのビーコンはマッチ箱ぐらいのサイズしかないので、恐らく展示ケースの中に仕込まれており、外見上はまったくわからなかった。
大変すばらしい試みなのだが、国立博物館のどこでも説明しておらず、パンフレットにも記述が無く、ホームページでもどこにリンクがあるのかわからないという状態で、非常にもったいないと思う。
Google GlassのようなHMDデバイスが普及した際には、ぜひ対応していただきたい。画面を見下ろす必要がなくなるので、さらに快適に展示物の鑑賞が可能になるだろう。