2014年9月24日水曜日

2015年、もっとも大きく伸びるテクノロジーのランキング (少人数プロジェクトの視点で)

大量生産可能なインフラや莫大なマーケティング費用をかけることができる巨大企業やデファクトスタンダードなプラットフォームを所有する企業にしかできないことは除外し、スタートアップや少人数プロジェクトでも1年で大きく躍進できそうな分野についてランキングを作成してみた。

1位:「HMD用映像コンテンツ」
    ・全方位録画が容易になり、多量のコンテンツが氾濫するようになると専門のキュレーションサイトの需要は高まるだろう。
    ・テレビ番組制作プロダクションが、ヴァーチャル旅行コンテンツを扱うようになり躍進する。いずれ専門の会社が作られ、トータル・リコールのリコール社のようなビジネスが広がる。

2位:「ウェイラブルペリフェラル」
    ・iOSのHealthCareも登場し、2015年初頭にApple Watchが発売されればさらに伸びる分野。時計やリストバンドやHMD以外にも様々な形態が考えられるし、特定の職業・作業に限定したものも受容性はある。スモールプロジェクトでもアイデア次第で世界に挑める分野。

3位:「3Dプリンティング」
    ・高性能な3Dプリンタをオンラインで利用できるサービスは続々と登場しているが、モデリング作業は素人には難しい。そこでクライアントの要求に応じて3Dモデリングを短時間で行うビジネスが躍進する。現状のホームページ制作サービスと同じような形態になるだろう。

4位:「小売店用プロジェクションマッピング」
    ・プロジェクションマッピングが家庭でも簡単に実現できるようになると、小売店の集客用として小規模でオーダーメイドなプロジェクションマッピングを提供するサービスが現れる。

5位:「家庭用ロボット向けアプリ」
    ・Softbank の Pepper や Intel の Jimmy のようにプログラマブルなロボットが普及すれば、これらに向けたアプリ開発も大きなビジネスになる可能性がある。会社や店舗の受付など、クライアントの発注を受けてロボットをカスタマイズする会社が現れるだろう。ただ、大きなビジネスになるのは2016年以降と思われる。

6位:「プロパティシェアリングサービス」
    ・AirBnBは宿泊だが、モノがあふれている現代において、シェアすることで双方が特をするものは他にもいろいろあるはずだ。車、高価な機材、電力など。世界で運用可能なネットワークサービスを構築することは困難だが、巨大ビジネスに成長する可能性を秘めている。

7位:「スマートホームペリフェラル」
    ・IOT家電や制御人工知能は大きく伸びるが、スモールプロジェクトが大企業に挑むのは難しい。身の周りに置いておくとちょっと便利なデバイスという位置づけなら、まだまだ余地はあるだろう。

8位:「モバイルHMD用ゲーム」
    ・HMDの普及に伴って1人称視点のオープンワールドなFPSやAVGの需要が高まることは必至だが、映像にリアリティが求められるため開発費は億円単位になり、すでに3Dゲームを作っている大手ゲーム会社でなければ初期投資が大きすぎる。「PORTAL」のようなパズルゲームなら低予算で開発できるが、セールスは限定的だろう。

9位:「モバイルHMD用アプリ」
    ・便利なアプリというだけでは特許を取得することは難しいため、スタートアップが画期的なアプリを開発しても、AppleやGoogleがOSに標準搭載してしまうとビジネスとして破綻してしまう。多数のユーザーを確保してしまえば強みとなるが、新規デバイスではそれが難しい。

10位:「家庭用コミュニケーションロボット」
    ・家庭用ロボットのメカニカルな技術については、すでに実用化の域に達しており、今後は低価格化と人工知能の勝負になる。するとアイデアよりも長年の研究に基づく技術の重要度が高まり、スモールプロジェクトにとって勝機は少ないだろう。

Oculus Crescent Bay

先日行われた東京ゲームショウ2014でも、Oculusは様々なブースで出店されており、例外なく行列ができていた。任天堂がWiiリモコンを発表した時の「体験してみたい!」という興奮を思い出す。今、間違いなくHMDの波が押し寄せてきている。
渦中のOculusが9月19日に行われた開発者会議「Oculus Connect」にて、量産型に近いとされる新試作機「Crescent Bay」を発表した。(ちなみにCrescent Bayはコードネームで、ロサンゼルスのラグナビーチにある湾の名前だ)


DK2からの目立った変更点としては、立体音響を実現するヘッドホン、プレイヤーが後ろを向いていても頭の位置と角度をトラッキングするためのLED、装着を楽にするための頭部ベルトのシンプル化。画像の粗は目立たなくなり、重量も軽くなっているようだ。

そしてOculusはパソコン用HMDとしてだけでなく、モバイル版の開発も並行して進められていることが明らかになった。PCやコンソール機と接続するケーブルは没入間の妨げになる。スマートフォンを装着する形にすれば単価も安くできる。内蔵カメラを使うことで、外部センサーも不要になるかもしれない。Oculusは世間が予想しているよりもずっと早く、おそらく2016年にはモバイル版が主力製品になっているだろう。

2014年9月23日火曜日

SONY SmartEyeglass

ソニーが発表したHMD「Smart Eyeglass」は透過型HMDで、Google GLASSや、EPSONのMOVERIOに競合する製品だ。

SONY SmartEyeglass
独自のホログラム技術を使っているとのことで、レンズの厚さは3mm。プリズムを使っているGoogle GLASSやMOVERIOに比べて薄く軽くなっており、具体的数値は不明だが表示領域の視野角も広い。MOVERIOが映画鑑賞も想定してフルカラー表示であるのに対し、Smart Eyeglassは用途を情報表示に絞り込み、緑1色表示としている。既存の映像コンテンツを鑑賞することには使えないので、この製品が成功するのかどうかは、アプリケーション次第と言えるだろう。
ソニーからは具体例として、料理レシピ、ナビ、スポーツ観戦、SNSなどを挙げている。
その中にK-Opti.comとACCESSという会社が共同開発したアプリ「グラッソン(Glassthon)」があるのだが、2014年10月26日(日)に行われる大阪マラソンで神戸大学の塚本昌彦教授らが実際に使用実験をするとのこと。この公開実験は注目されるだろう。
国内初!メガネ型ウエアラブル端末を活用したランナーへの情報配信実証実験について

想定される主な用途は、「手がふさがっている、あるいは何かを注視していなければならない状況下での緊急情報の取得」だろう。具体例を挙げると・・・
・状況
    ・歩行、自転車、通勤電車。(運転中は危険なので除外)
    ・工場、工事現場、病院、店舗、警備。
・情報
    ・業務上緊急連絡(上司からの指示、急患、ナースコール、事故発生)
    ・作業補助情報(患者の体調、生産率、プロンプタ)
    ・趣味情報(株価変動、Twitter、Ingress、カラオケの歌詞)

このように、「単色表示・大画面・軽量」という特徴を考えると、業務用途では非常に広範な分野での効果的な活用が期待できることがわかる。この製品が勝ち残るのかどうかは別として、HMD向け業務用アプリの市場は、今後数年で爆発的に成長できるのではないだろうか。

2014年9月4日木曜日

HMDは来年中にモバイルデバイスになる Samsung Gear VR

Samsung Gear VR はGalaxy Note 4 専用のアクセサリとして年内発売予定とのこと。
Galaxy Note 4 を持っていない大多数の人にとっては無用の長物であるし、単に「手で持たなくていいカードボード」と軽く見る向きもあるが、この製品の発表は、今後Oculus的HMDが急速に家庭に普及する可能性を示唆している。
Oculusはいまだベータ版として開発者に販売されている状況であり、Sony の Morpheusに至ってはいちぶのデベロッパーに開発キットが配布されているに過ぎない状態だが、このコンスーマー製品ならではのゆったりとしたペースは、モバイル界のスピードにあっというまに追いぬかれてしまうだろう。
Gear VR じたいはマイノリティで終わるかもしれないが、あと1年もしないうちに他の機種に対応したキットが各社から雨後の筍のようにリリースされるだろう。ユーザーはスマートフォンのケースを選ぶように、自分の好みに合わせてHMDを選べばいいわけだ。旅行会社や不動産会社、博物館や屋内アミューズメント施設などでは、多数のHMDを用意して、客に貸し出すだろう。コンテンツさえ良質なものがそろえば、その普及数はPC用やコンソール用のHMDを軽く抜き去ってしまうことは間違いない。
確かにリアルタイムに3D映像を生成するにはGalaxy Note 4でも非力であり、FPSのように高速で頭部を振り回さなければならないゲームには向かないだろう。しかし家庭で鑑賞されるHMD用コンテンツの種類を予想すると、圧倒的に多いのはエクストリーム・スポーツやクァッドコプターによる空撮といった体験映像だ。多少、映像の追従性が遅くとも致命的とは言えない。




Tobii EyeX Dev Kit

トビー・テクノロジー社製の視線入力開発キットは95ドルで販売中。
起動後、画面上を動くオレンジ色の球体を5秒ほど目で追うと、セッティング完了。上下左右20センチくらいなら顔を動かしても認識される。
CEDEC2014のブースで用意されていたデモは以下のとおり。
・地球に落下する隕石を視線で撃ち落とすシューティングゲーム。
・全体的に映像がボケた航空写真。視線を合わせた場所のフォーカスが合う。
・大きめのプチプチ。見つめつづけると潰れる。
・テキストリーダー。視線でスクロールや書類の切り替え。
ノートPCサイズの液晶モニターで使用する際の精度はゴルフボール大ぐらい。
シューティングゲームのデモでは、見るだけで隕石が爆発しているので、自分で狙って撃っているという実感が得られなかった。
いっぽうテキストリーダーは非常に便利だと感じた。普通に読んでいる間は視線入力はまったく使わないが、ページをめくりたくなったとき、画面の下を見つめるとスクロールする。これはさほど精度も要求されないし、明らかに便利なので、数年もすればすべてのスマートフォンやタブレットに搭載されるのではないだろうか。
あとは運転中のカーナビ操作とか、料理中のレシピ検索とか、両手がふさがっているシチュエーションにおいては、やはり視線入力が生活の中にはいってくるであろうことが確認できた。


2014年9月3日水曜日

神戸大学・塚本教授の予言

ウェラブルコンピューティングの研究で有名な神戸大学の塚本教授が、11年前にCEDECで公開した予言を再度公開した。(実際は最後の行に、「20年以内に家庭用ゲームは消滅する」と一瞬だけ表示されたのだが)
塚本教授が自ら言うように、上から3つ目までの予言については、現在ようやく多くの者がリアリティを感じる内容になっている。
4つ目の「ほとんどの人がHMDをはずせなくなる」については、実現性は20%といったところか。HMDが大衆に普及するためには、装着してもほとんど違和感が無いほど軽量で安定感のあるものになる必要があるが、現時点でその候補となるものが出てきていないことを考えると、5年ではちょっと厳しそうだ。
5つ目の「電脳鬼ごっこ」も面白そうだが、ここは「インターネットに接続されたデバイスを身につけ、現実空間で動きながらプレイするゲーム」と広義に解釈したほうが良いだろう。缶蹴りのように陣地を用意してもいいし、銃を導入して遠隔的な面白さを導入してもよいだろう。ただ、子供用としてデザインする場合は、仲間はずれを産まないようにするべきで、1人あたりのデバイスの費用は500円程度に押さえたいところだ。このコストの問題が解決できれば、空前のブームになることも十分にありえるだろう。

スマートおもちゃ 「Moff」

Moffは大阪のハッカソンから始まり、SXSWで話題になり、kickstarterでは開始後約1カ月で目標の2万ドルの約4倍となる8万ドルを調達したスマートおもちゃ。5600円の筐体に加速度センサとジャイロを搭載。腕につけて振ると、その勢いや角度に応じてスマートフォンから音がでるという仕掛けだ。
確かに2~3才の子供なら大喜びしそうだが、遊ぶ際にスマートフォンが必須なので、子供が飽きる前に、親のほうが面倒くさくなってしまいそうだ。もしバンダイやタカラトミーからスピーカー内蔵型が発売されてしまったら、玩具としての存在価値は無くなるだろう。
しかし子供にとって「体を動かすと音が出る楽しさ」というものは普遍的だ。Moffは消えていく運命かもしれないが、今後スマートホーム化が進み、高価なリストバンドやスマートフォンを使わずとも体の動きに応じた効果音を発生させることができるようになったら、子供の遊びとして定着するのではないだろうか。

Moff