レイ・カーツワイルは、「2019年までに1000ドルのパソコンが人間の脳と同じ実力をもつに至り、2045年までに全人類の10億倍の知能に達する」と予想しているが、ニューヨーク市立大学の理論物理学教授であり、超ひも理論の権威であるミチオ・カク博士は人工知能の分野における現在の状況を下記のように捉えている。
「ゴキブリさえ、物体を認識して迂回することを学習できる。われわれはまだ、母なる自然のきわめて下等な創造物に、最高の知能をもつロボットでも勝てない段階にいるのである」
「ロボットがマウスやウサギ、イヌ、さらにはサルぐらいに賢くなるには、まだ何十年も熱心に研究しなければなるまい」
Michio Kaku |
以下の6つの理由により、彼はコンピュータの知能が人間に達する段階を今世紀の末と見ている。
①ムーアの原則は減速し、2020~2025年頃に止まるかもしれない。
②コンピュータの計算速度が脳のそれに達したとしても、賢いというわけではない。
③コンピュータが自分より賢いコピーを作れるかどうかわからない。
④ソフトウェアの作成は人間がコーディングしなければならないため時間がかかる。
⑤脳の分析には金がかかる。資金が集まらなければ時間がかかる。
⑥意識には段階があるため、機械がいきなり意識をもつようになることはない。
脳細胞の数はショウジョウバエで15万、マウスで200万、ラットで5500万あるが、人類の技術はまだショウジョウバエの脳さえもシミュレートできていない。しかし人間脳は1000億の脳細胞をもち、おのおのが1万の脳細胞と結合している。カク博士の推測はやや悲観的すぎるきらいもあるが、人工脳の実現には、かなりの困難を要することは間違いないだろう。