2014年7月31日木曜日

2020ふつうの家展 by三井不動産レジデンシャル に行ってきた

三井不動産レジデンシャルの「2020 ふつうの家展」先行見学会に参加してきたのでご報告。2020年の家というと、パナソニックも「Wonder Life-BOX 2020」を公開中だ。パナソニックが都会的でクールな未来像としてコンセプトが統一されていたのに対し、「ふつうの家」はいろんな人がいろんなアイデアを詰め込んだ実験室的なノリだった。
キオクスル食卓
天井に備え付けられたカメラでテーブルを撮影した映像を、同寸でプロジェクターが映写している。毎日の食卓を録画し、再生できるとのことだったが、見上げないかぎり手しか映らないので普通に横から撮ったほうがよいのではないかと感じた。このシステムを活用するなら、お台場の「ソニー・エクスプローラーサイエンス」にあるように、家族で協力してアート作品を作ったり、バーチャルなボードゲームで遊んだりするほうが楽しそうだ。
ツナガル窓
上記の「キオクスル食卓」の壁際には大型モニターとステレオマイクとカメラが設えている。モニターには通常は風景が映されているがテレビ電話として使うと、まるで相手が隣の部屋にいるように感じられるというコンセプト。機能としてはFaceTimeやSkypeや任天堂の「Wii U Chat」などと変わらないのだが、画面が大きいので相手の表情だけでなく、服装や食卓や部屋の内装や窓外の風景なども目に入ることはメリットだ。遠隔地に住む両親や単身赴任の夫とコミュニケーションをとりたいひとには魅力的な環境だろう。現在でも実現できる技術だが、金がかかる。
ツクル空間
レシピが投影される調理台という点ではパナソニックの「Wonder Life-BOX 2020」と同じだが、パナソニックは水道の蛇口が計量してくれたし、IHヒーターが通常は不可視化されていたので、こっちは負けている印象。いちおう調理台の下に3Dプリンターが入っていて、料理だけでなく工作もできるというところが特徴なのだが、工作中に料理しようとするとき、いちいち片付けるのは面倒だし、造形物に料理の油がはねたりするのも嫌なので、あまり実用性はないのではと感じた。
オトノナル扉
上の写真はドアを開けた時に、その早さや気分に応じて音がなるという展示だが、「電灯をつけたときも音が鳴ったら気分がアガりますよねー」という解説があり、家の中で何かをするたびにいろいろな音が出たら確かに楽しそうだなーと感じた。毎朝、目が覚めたとき朦朧としながら、ベッドから起き上がり、カーテンを開け、顔を洗い、トイレに入り・・・と一連のルーチンワークをこなすわけだが、この一挙手一投足に音がついたら、気分よく覚醒できそうだ。
ただ、これは現在でも可能なだけでなく、さして金もかからない。デバイスをKickStarterや秋葉原で見かけてもおかしくない技術ではある。
ファブラボ・ワークショップ
鎌倉でデジタルファブリケーションの施設を運営するファブラボさんによる参加型イベント。レーザーカッターで作成された木製アルファベットを組み合わせて部屋の表札を作りましょうというもので、「ものづくりを通じて、意外な素顔が見えてくる」という言葉には説得力があった。鎌倉は遠くないのでそのうち行ってみようと思うが、これ、2020年の普通の家とは関係ないような・・・。
トークセッション
最後はギズモード尾田編集長をモデレータに迎えてのトークセッション。キオクスル食卓で玩具を使おうというアイデアは昨夜思いついたそうで、綿密に計算し計画されたプロジェクトというより、アジャイル的で実験室な展示であることがわかった。
正直に言うと今回の展示内容は期待していたものとは違ったのだが、日々変化していくとすれば、いずれまた訪れてもよいのではと思った。

2014年7月29日火曜日

狭い日本、金をかけるなら風呂でしょ

下の写真はLIXILが2014年8月から発売する「SPAGE」だが、実は「パナソニックセンター東京」の展示でも最も心惹かれたのは風呂テレビだった。
今も防水の無線テレビを風呂に持ち込んで映画やドラマを楽しんでいるが、特に「南極物語」や「八甲田山」のように登場人物が寒さと戦っているような映画を風呂で鑑賞するのは格別に気持ちがよい。しかし画面は小さく音質も最低レベル。やはり金はかかるが、いつかはビルトインを購入したいものだ。
ただ、長時間お湯につかっているとのぼせてしまうので、顔だけ外に出せるような風呂ブタも必要になるだろう。


2014年7月28日月曜日

電気飛行機はいつになったら市販されるようになる?

テスラが300kmの航続距離をもつ電気自動車を300万円台で発売しようとしている昨今、次は完全に電気だけを動力とした飛行機の実現が望まれている。しかしラジコンの電動飛行機は珍しくも無いし、自転車を改造した人力飛行機もある中で、意外にも電力飛行機の実現は遅れている。
今のところ2014年4月に発表されたエアバス・グループの「E-Fan」が最もリードしているようだ。
機体は炭素繊維複合材で、重量は580kg。
電源は韓国KoKam社製250ボルト100アンペアの大型(127 kg)リチウムイオンポリマー電池。
出力30kwの電動モーターで8枚ブレイドのダクテッドファン2基を駆動させる。
2人乗りで、座席はタンデム配置。最高速度は、時速177kmで最長1時間の飛行が可能とのこと。
バッテリーの重量が本体の22%を占めており、やはりバッテリーの容量と重量が最大の課題であることがうかがえる。
エアバス社は15年~20年後の実用化を目指しているようだが、先日レドックスフロー蓄電池を搭載した電気自動車「QUANT e-Sportlimousine」を発表したnanoFLOWCELL社によると、同社のnanoFLOWCELLバッテリーは従来のリチウムイオン電池に比べ、重量あたり5倍の性能を発揮するそうで、最新の技術を組み合わせれば、電気飛行機の実現はもっと早まるのではないだろうか。

2014年7月27日日曜日

植物繊維って凄い ナノセルロース Nano-Cellulose

セルロース (cellulose) とはもっともありふれた炭水化物の一種で植物の細胞壁や繊維の主成分であり、紙の主成分でもある。そう聞くと白くてふにゃふにゃしたものをイメージしてしまうが、セルロースをさらにナノレベル(太さ4~15ナノメートル)にまで細かくほぐし(微細化処理)、ナノセルロース(セルロースナノファイバー、セルロースナノファイバー、セルロースミクロフィブリル)とすると、透明で軽くて硬い、夢のような新素材としての特性が現れる。

・強度は鋼鉄の5~8倍、プラスチックの3~4倍。ケブラー、アラミド繊維、マグネシウム合金と同等。
・重さは鉄の5分の1。プラスチックの3分の1。
・熱膨張率は高純度な石英ガラス級。ガラスの50分の1。
・石油ではなく材木から作る。森林資源が多い日本には有利。
・生分解性があるので環境にやさしい。
・製造コストはケブラーやカーボンファイバーの10分の1。

と良いことづくし。考えられる応用分野は多岐に渡る。

・温度変化で大きさが変わりにくい容器。
・小さく折りたたむこともできる太陽電池。
・超薄型で曲げることもできる有機ELディスプレイ。
・防弾ガラス。
・車や飛行機を軽量化できる。車1台あたり300kg軽くでき、燃費を20%軽減させる。
・微生物を取り除くフィルター。
・人体に親和性のたかい人工臓器。

王子製紙は2013年末から早くもサンプル提供を始めており、あと10年もすれば身の回りの多くのものにナノセルロースが導入されることになりそうだ。
カニやエビから抽出するキチンナノファイバーも新素材として可能性が高いらしく、改めて生体の高性能ぶりには驚かされる。

2014年7月26日土曜日

デジタルフォトフレーム全盛期は目前

現状、フォトフレームの価格は21インチのものが4万円ほどで、27インチのPC用ディスプレイが2万円で買えることを考えると割高感があるが、今後さらに軽くなり低価格化が進めば、インテリアとして購入する人は増えるだろう。しかも1台ではなく複数を並べたり、窓の代わりに風景を表示したりしたくなることは必至で、家電のひとつの分野を築くだろう。
表示画像を変える際にいちいちSDカードを抜き差しするのは面倒だし、HDMIケーブルでつなぐのも格好悪いので、今後はBlueToothLowEnergyなどの無線機能を内蔵し、スマートフォンからの操作で表示画像を変えたり、複数の画面間で連動できるものが主流になるだろう。
ハードウェア的には特殊な機能よりも、いかに軽く大きく綺麗な画面を安く提供できるかにかかっているので、いかにもSamsungやLGが強そうだが、携帯音楽プレイヤーにおいてiPodがWalkManを制したように、結局はプラットフォームの使い易さが勝負を決めるように思う。
iCloudと連携して自分で撮った写真を簡単に表示できるようにしたり、無数の名画の中からユーザーの趣味や季節に合わせたものをチョイスしてくれるgenius機能は必須だが、FRAMEDが提案しているようなアーティストとユーザーを結びつける仕組みも面白い。何気なく聴いていたラジオや有線放送で流れた曲が気に入って購入するのと同様に、次々と表示される無名のクリエイターの作品群の中から、自分にぴったりのものが見つかるかもしれない。
また、Electric Objectでも紹介されているが、デジタルフォトフレームの普及でgif的なループ動画のニーズが高まることで、スティルとショートムービーの間に位置する新しいアートの分野が確立されることになるだろう。


視線入力HMD 「FOVE」は期待できるか?

FOVEは視線入力機能をもったHMD。両目の斜め下方向から赤外線センサーで眼球の角度を捉え、ユーザーがどこを見ているかを検出する。2015年初頭のKickStarterと同年夏の発売を目指して試作中とのこと。
応用例の筆頭として挙げられているFPSでのエイミングについては、実はあまり期待できない。かつてiPhoneなどタッチスクリーンを搭載した機種用のシューティングゲームで、ターゲットを直接タップするタイプのものがあったが、まるでゲームセンターの「もぐらたたき」をプレイしているような感覚になってしまい、まったく面白くなかった。シューティングゲームというものは、距離とか重力とか風とか自分の呼吸だとか様々な制約の中で狙いをつけるからこそ「俺ってすげぇ感」が得られるのであって、ターゲットを直接ポインティングできてはいけないのだ。
しかし、「ユーザーが見ている対象に応じて被写界深度を変える」機能については興味深く、どれほどの没入感が得られるのか早く体験してみたいと感じた。手前のキャラクターを見ている時は背景がボけ、遠景を見ている時は手前のキャラクターがボけるわけで、予想以上の効果があるかもしれない。
日本の、しかもゲームソフト開発出身のかたが起業したとのことで応援したいところだが、アイトラッキング技術じたいは以前からあるものなので、先行するOculusやMorpheusも取り入れてくるかもしれない。差別化するため、例えばポインティングだけでなく、Emotiv Epocのように脳波を読み取るなどして、手を使わずにクリックできるようにしてはどうだろうか。

2014年7月25日金曜日

フロー電池(FLOW CELL)の原理

2014年3月、ジュネーブモーターショーで発表されたnanoFlOWCELL社の電気自動車「Quant e-Sportlimousine」が欧州で行動を走る許可を取得したとのこと。1回の充電で走れる距離は600km。同社によると従来の(Teslaの)リチウムイオン電池にくらべ5倍の効率だとか。
フロー電池はレドックス・フロー電池(レドックス=Reduction-Oxidation Reaction)とも呼ばれる充電池。1884年フランスの科学者シャルル・レナールが発明し、1974年にNASAが月面基地用動力源として注目したことで世界中で研究が進められるようになった。1984年ニューサウス・ウェールズ大学のカザコス教授が蓄電物質としてヴァナジウムを使うことを発見し、実用化に目処がたった。住友電気工業は2012年から横浜の施設で太陽光発電の蓄電実験を行っており、海外進出することも発表している。
フロー電池の構造は下記の通り、2種類のイオン溶液をイオン交換膜で隔て、酸化反応と還元反応を同時に進めることによって放充電を行う。
  • 充電時
    • 陽極
      • V4+が陽極に電子を放出しV5+に酸化。余ったH+はイオン交換膜を通じて陰極へ移動。
    • 陰極
      • V3+が陰極から電子を得てV2+に還元。
  • 放電時
    • 陽極
      • V5+が陽極から電子を得てV4+に還元。
    • 陰極
      • V2+が陰極に電子を放出してV3+に酸化。余ったH+は陽極に移動。

イオン交換膜とは、異符号のイオンの通過を阻止し、同符号のイオンのみを通過させる性質をもった膜のことで、その厚みは文字通り0.01mm-0.5mmとかなり薄い。

フロー電池は小型化が難しいとされるが、nanoFLOWCELL社は何らかの方法で乗用車への搭載を実現し、今後は他の分野にも事業拡大していく計画とのこと。
フロー電池の概念図を見ると、まるで心臓の心室ように見える。ぜひヒューマノイド型ロボット用の電池として実現してほしいものだ。

2014年7月24日木曜日

自虐(?)デバイス「KOR-FX Gaming Vest」

KOR-FXはプレイ中のゲームから爆発や銃撃などの環境フィードバックを得ることができるベスト。電池で作動するのでワイヤレス。PCやコンソールゲーム機のオーディオ出力を読み取るのでゲーム側での対応は不要とのこと。KickStarterでのファンディングは本日終了予定だが、すでに目標額の2倍の17万ドルを獲得している。
以前からあるゲーム用の座椅子をベスト形状にしただけといってしまえばそれだけのことなのだが、これならKinectやOmniなど体を動かしながらプレイするゲームにも対応できる。体を動かさないゲームであっても、プレイに熱中すれば体をよじったり姿勢を変えたりするので、より没入感が得られるだろう。OculusやMorpheusなどでプレイするならなおさらだ。
というわけで期待を込めて10ドル投資した(セコっ)

2014年7月22日火曜日

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society

2006年に公開された神山健治監督による攻殻機動隊SACシリーズ初の長編。
草薙素子が擬体を乗り換えることで諜報活動を行う場面が映画「サロゲート(2009年)」を想わせる。非常に面白いギミックなのだが、使いすぎると複雑すぎて視聴者がついてこれなくなる。そのためか「同時に操れる擬体は2体が限界」と制約を設けているようだ。
2034年の未来を描いているにも関わらず主人公たちの乗る乗用車は驚くほど現代の車のまんまなのだが、本作ではSACシリーズおなじみの多脚戦車「タチコマ」が登場。ようやくSF作品らしいカーチェイスが楽しめるようになった。
ただ、1995年公開の第1作に匹敵するほどのSF的な新しさやインパクトは感じられなかった。人間より高次元な存在に進化したはずの草薙素子が、ネットの世界を渡り歩いてさらに別の概念へと変貌していく姿を期待していたのだが、やはり人気キャラクターを失いたくないということだろうか、むしろ逆に退化し、普通の人間に戻っていっているように思える。
これはシリーズ化による宿命なのかもしれない。

2014年7月21日月曜日

イノセンス (GHOST IN THE SHELL 2)

攻殻機動隊の続編。2004年の劇場用アニメだが、今ごろDVDにて鑑賞。
背景CGとキャラクターのセル画を組み合わせたプロダクションI.Gの映像表現は見事。とくに黄金色を基調とした択捉経済特区の独特の文化描写は圧巻。
しかしSFとしては前作と比較して新しいアイデアも無く、静的な会話が多くてアクション映画としても退屈だ。前作で「人形使い」と融合し、新たな生命体の形態にシフトしたはずの草薙素子が、単に「何の葛藤も持たない」退屈なネットの住人になってるだけというのも残念だった。
前作では「人間と人工知能」を対比させていたが、今回は「人間と人形の違い」をテーマにしている。しかし監督は人間の意識について、単に記憶と記憶を結びつける存在としか考えていないらしく、議論が空回りしている印象を受ける。意識とは「新たな情報をもとに再認識し続けること」であり、人間とは人間という制約の中で再認識をし続ける存在だ。「自ら認識を再構築し続ける能力を有するか?」「再認識にあたりどんな制約を受けるか?」といった観点で他者と比較しなければ、議論が成り立たないのだ。
相変わらず人間描写が薄い映画だったが、バトーの飼っている犬だけは実に魅力的に描かれていた。この監督は犬の映画を作ればよいのにと思う。

攻殻機動隊 2.0 (GHOST IN THE SHELL 2.0)

レンタルDVDにて鑑賞。いちぶCGが導入されているが、元となっている劇場用アニメ「攻殻機動隊」は1995年公開なので、内容的には20年前の作品ということになるが、さほど古臭さを感じさせないのは流石だ。草薙素子が装着するゴーグルはシンプルなデザインだが、心なしかOculusに似ている。
スパイ用に開発された人工知能が製作者も意図していない中で自我をもってしまうというくだりはややファンタジー感があるが、人が脳をネット接続するような時代になったら、それを悪用し、人に記憶を植え付けたり行動を操作したりといった犯罪が発生しうるという予想は的を得ているし、幼少期から脳と脊髄以外を機械に置き換えてしまった草薙素子が、肉体という制約に違和感を抱きはじめ、人形使いからの無茶な提案を受け入れてしまう展開も、今でこそ視聴者の納得感に期待できるものの、よくも20年前に考え至ったものだと改めて関心してしまった。
しかしこの作品、登場人物に人間的な魅力が感じられない点が残念だ。人工知能と対比するためにも人間性の描写は必要だと思うのだが、どうだろうか。